訳あり物件専門家 白石 麗花です。

駅のホームで電車を待つのが一番苦痛な季節になりました。

先日、名古屋まで参りましたが遅延している新幹線を待つ間の

寒いことといったら。

みなさんも風邪ひかないようになさってくださいね。


~刑務所の中からマンション売却~

 

人は様々な事情で時に罪を犯し、罰を受けなければならないときがあります。

罰を受けることにより、収入が途絶え、ローンの返済ができず、

自宅を売却しなければならなくなることもあります。

 

私がマンションの売却の依頼を受けたその男性、

重大な交通事故を犯し、その時点では拘置所に拘留されていました。

親類の司法書士に獄中より手紙で相談したうえで、

銀行に迷惑をかけるわけにはいかないので一刻も早くマンションを売却してほしい

という依頼を司法書士の先生を通じてお受けしたのです。

 

マンションを売ることはできますが、とはいっても、売主さんのご意思を確認したり、

媒介契約を交わしたり、もしくは買主さんの内見はどうするのか、

契約はできるのか、銀行ローンの残債はいくら残っているのか、問題は山積みです。

 

とりあえず、司法書士の先生と一緒に売主さんのいる塀の中を訪ねてみました。

ところが・・・

 

一度目の訪問では、刑務官のかたに「今月の面会回数はもう残っていません」と

断られてしまいました。面会回数は月に二回までと決まっているようです。

売主さんの国選弁護人の先生へ協力をお願いしてみましたが、

「交通事故に関すること以外、当職は関知しません」とけんもほろろ・・・

やむを得ず司法書士の先生を通じて実家の親御さんを経由して

翌月の訪問の約束を取ることができました。

 

ようやくお会いできたのですが、拘置所に入る際は、金属探知機を通されたり、

刑務官の方から訪問の趣旨を聴取されたり、

挙句の果てにはボディチェックまでされる始末、

刑務官のかたと仲良くなれば何とかなるという甘い考えでいた私には、

ここからが大変でした。

 

媒介契約の締結や、重要事項の説明、契約の締結、

そもそも印鑑一つ押していただくのに全て郵送で行わなければなりません。

それも拘置所の刑務官の方の検閲があるのです。

無い知恵を絞って司法書士の先生と相談し、先生自身へ

その方からあらゆる事務の代理人になっていただき、

何とか売却のクロージングができました。

 

マンションの売却は無事終了したのですが、それ以降、

そのかたとは一切連絡を取るすべはありません。

司法書士の先生はご存じなのかもしれませんが、

拘置所からどこの刑務所へ移ったのか、まだ服役しているのか、

それとも出所なさったのか。

この方は、離婚歴があって、

子供もいないとのことでしたのでまだよかったのかもしれませんが、

人生には何が起こるかわからない。

 

私は、この不動産の取引を通じて売主さんとは一度しかお会いすることができず、

ちょっと自分としては消化不良のような感覚がいつまでも消えませんでした。

私は売主さんにとって、意にかなったお取引をご提供できたのだろうか?

牢屋の中から、とりあえず満足していただけたのか。

それとも、もはやどうでもいいことだったのか。

たしかめることはできませんが、このケースでは仕方がないのかもしれませんね。

 

すごく大変な売買だったけれど、貴重な体験をさせてもらったと思っています。

れいか

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