世界における不動産テックの投資額78億米ドル(日本円で約8,853億円)のうち、60%を占める48億米ドル(約5,448億円)がアジアで投資されていることがジョーンズ ラング ラサール(以下、JLL)の調査でわかった。日本でも不動産テックが注目され始めているが、アジアの現状はどうなのだろうか(リビンマガジン Biz編集部)


(画像=JLLのリリースより)

■アジア、特に中国で活況

JLLの調査によると、アジアで投資されている48億米ドル(約5,448億円)のうち、30.2億米ドル(約3,427億円)が中国だという。中国では、内見や価格査定、必要書類の提出など多くが電子化され、タブレットなどの電子端末でおこなわれているという。中国国内の経済成長と共に不動産市場も活況である。

■インドもアジアのテック市場をけん引しつつある

また、インドでも急激な電子化が進んでいる。インド政府がモノやサービスの取引をすべて電子化しようと高額紙幣を廃止するなど、顕著な動きを見せている。露店や市場などでもスマートフォンをかざして決済するという奇妙な光景が見られる。不動産の取引においても電子決済化が進んでいる。

さらに、不動産会社やテック企業のM&Aが繰り返しおこなわれ、不動産業界の形成が進んでいる。


(画像=写真ACより)

■日本の不動産テック市場は進んでいるのか

日本は、アジア諸国と比べて不動産テックが進んでいるのか。日本不動産研究所の幸田氏によると、「一概に遅れているとはいえない」という。日本は不動産の分野で、早くからポータルサイトで物件掲載のネット化が進んでいた。しかし、物件掲載以降の実務に関わるところではまだ進んでいないのが現実だ。

日本では不動産実務の商慣習が根強く残っており、取引内容も不透明とされている。そのため、新しいものを取り入れる余剰が少ないのだ。アジアの新興国では、まだ不動産分野が開拓されていないので、新しいシステムを取り入れる余地がある。だからこそ、海外投資家がこぞって不動産分野に投資している。

また、中国でも香港は日本と同様に不動産市場が昔から成熟しており、ある程度の商慣習がある。しかし、香港の不動産業者や消費者が今の慣習や営業手法が効率的でないと感じているため、新しい取り組みや手法の試行に寛容だといわれている。

日本では、テクノロジー活用促進に向けて「未来投資戦略」を日本政府が発表した。2020年までに多くの産業にテクノロジーを導入して問題を解決していくというものだ。

日本でも古くから続く慣習に納得するのではなく、香港のように新しい技術・システムを受け入れる体制にならなければ、不動産分野がアジアの中でも一番低いレベルで推移する日が来るかもしれない。

 
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