一般住宅に有料で客を泊める、民泊についての基準を定めた「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が成立した。
今回の新法成立を各社はどう報じたか、法が成立した翌日6月10日の主要4紙朝刊を読み比べてみる。


各紙の見出しをもとに作成 (画像=リビンマガジン編集部撮影)

法律より現状が先行していた

まず新聞報道に移る前に、民泊を巡る背景に触れておこう。
昨今、海外からの外国人旅行者が急増し、ホテル・旅館などの泊施設が不足しており、民泊が新たな宿泊サービスの受け皿として注目されている。特に、値段が安いことが海外旅行者に人気の要因の一つだ。一方で、近隣住人とのトラブルも多く報告されており、「民泊禁止」をうたうマンションも増加中だ。

以前は、東京や大阪などの戦略特区での営業、もしくは、旅館業法に則り許可を取って、営業しなくてはいけなかった。
この民泊新法では、各自治体に申請を出すだけで誰でも営業が可能になる。
経済効果を期待しての規制緩和だが、営業日数を年間180日と制限したのは旅館業界への配慮だといわれており法案への影響もある。法案では民泊ホスト(運営者)に対し、近隣住人とトラブルにならぬよう対応を求めている。
いずれにせよ、すでに多くの人に認知されるほど拡大している民泊に対応する法案ができた。
この大ニュースをどう報道したか、比べてみよう。


民泊イメージ ※本文に出てくる部屋とは関係ありません (画像=写真ACより)

積極的な「日経」、バランスの「読売」

まず好意的に取り上げているのが日経だ。「シェア経済ようやく前進 日本勢は仲介出遅れ」(6月10日)との見出しで、シェアハウスや民泊などのシェアビジネス市場が成長している点を伝えている。さらに中国や韓国などアジア各国に比べ普及が遅れていることや、新法で決まった営業日数の上限180日について「少なすぎる」「監視が難しい」などの意見があることを紹介している。さらに民泊仲介サイトの代表格のAirbnb(エアビー)の日本法人代表の田辺康之氏にインタビュー、民泊ビジネス側からの意見を紹介している。
民泊利用者のマナーについての言及した石井啓一国交相の言葉にも触れているが、全体としてより大きな規制緩和を期待している論調だ。

ちなみに、日経は26日付けの1面下のコラム春秋でも民泊に触れている。こちらはマンション名などで行き先を指示される京都のタクシー運転手の事例を紹介しつつ、新たな需要にどう対応すべきか苦慮する人たちの立場からまとめている。

続いて、読売は「民泊普及へ企業熱視線」(6月11日)という見出しで、京王電鉄やパナソニックといった異業種からの民泊事業参入を伝えている。こちらもエアビーの田辺氏のコメントを紹介している一方で、「違反が横行」として、民泊の問題点にも触れているなど、全体としてはバランスを意識した内容なのではなかろうか。「政府は、民泊の普及に向け、新法に基づき、業界の健全化にも取り組む。」と、政府見解をそのまま報じているのは、ご愛敬か。


外国人旅行者 (画像=写真ACより)

「朝日」は東西の取り上げ方に大きな差、「毎日」は…

特徴的だったのは朝日新聞だ。
東京は法案成立を伝える短いベタ記事のみ。あまりの短さに拍子抜けしたので、ネットで調べてみたら、大阪本社版に記事があった。本稿では原則として東京本社最終版を取り上げているが、ここだけ大阪版を参照する。
10日の朝日新聞大阪版は「人気の裏 住民苦悩 横行するヤミ民泊 大阪では」(6月10日)の見出しで、旅館業法の許可を取っていない「ヤミ民泊」の実態について、実際に記者が宿泊してルポ調の記事を掲載している。ミナミで一泊7000円という民泊マンションは、鍵の受け渡しをするキーボックスの写真もあり、ずさんな管理状態がよくわかる。このマンションに住んでいる住人に話を聞き、ゴミの投棄やタバコの不始末などの問題を指摘している。かなり時間をかけた独自の切り口の記事だった。
東京版との差はなにゆえだろうか?
東京では加計学園問題の追求で人手が足りなかったのだろうか。いろいろと解せない紙面構成であった。

しかしもっと驚いた紙面があった。毎日新聞は10日の朝刊では1行も記載が無い。
うーん、庶民の生活にも影響がある注目法案だと思ったのだが、そうでもないのだろうか。検索してみると法が成立した9日の夕刊で短く法案成立とその中身に触れていたのみだった。

新聞報道を比べてみると大きな差があった。
民泊新法は、早ければ2018年1月にも施行される。

 
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