【連載記事】

第1宅地建物取引士(宅建士)とは

第2宅建の合格率や難易度は?

まずは、宅建の試験内容を全体、科目別に形式面と内容面に分けて見てみます。

あわせて、独学で合格を目指す際の勉強法やコツを見てみます。

宅建試験の全体構造

(試験形式面)

宅建試験は全50問、四肢択一のマークシート方式で試験時間は120分(登録講習修了者は100分)で行われる競争試験です。科目は大きく5つに分かれており例年の出題序列は「権利関係14問」「法令上の制限8問」「税・価格3問」「宅建業法20問」「その他(免除科目)5問」であり、科目ごとに足切り基準点はありません。

(試験内容面)

平成24年から急激な難化傾向が始まった点については前回触れた通りです。

しかし、宅建試験は国家資格ですからいたずらに難化させているわけではありません。合否に影響する「得点するべき基礎基本問題」と、合否に影響しない「難問・奇問」を見極めて、結果的に前者を取りこぼさずに確実に得点を積み重ねればおおよそ合格圏内には入る事が可能です。

具体的には受検者全体の正答率50%以上の問題を自分も得点出来ているか否かが目安です。この視点は学習期間中に各資格試験予備校等で実施される模擬試験等でも意識をする必要があります。常に正答率を意識して、特に模擬試験の復習をする際には正答率が高いにも関わらず失点してしまった問題は早急に復習すべき問題です。つまり、網羅的に復習をするのではなく、優先順位を付けて復習をしましょう。

正答率50%以上の問題を結果的に自分も得点することを意識していることによって、試験問題で「難問・奇問」と「基礎基本問題」の難易の落差が大きい場面に遭遇したり、個数問題(正誤の個数を答えさせる問題)等に遭遇しても、それらに受験生の正常な判断能力を乱されない様に日頃から訓練を積んでいる受験生であればより合格は目前になるでしょう。

また、よく言われる宅建合格に必要な勉強時間ですが、一昔前までは300時間と言われている時代もありましたが、近時の宅建試験で必要な勉強時間は500時間と言われております。もちろん、学習の密度・個人差はありますが、「正しい勉強法」で「継続的努力」を実行する事が何よりも大切です。

予備校利用者は講師、予備校スタッフ、他の受験生などが周りにいます。

しかし、独学者は基本的に孤独です。孤独であるがゆえに、危機感が芽生え同じ1時間でも3時間に匹敵する濃い学習が可能となります。そうなるためにも、まずは確固たる「受験動機」が必要です。受験動機が明確であれば比例して合格意欲も備わります。合格意欲が備われば同時に危機感・不安感が増大します。その状態が正常ですから、危機感・不安感が感じられない場合は「受験動機」の曖昧さに起因している事が多いですので早急に受験動機を見出しましょう。

ここからは科目別にみてまいります。

権利関係

(試験形式面)

例年、問1から問14までが権利関係からの出題となっています。科目別に見ると「民法」「借地借家法」「不動産登記法」「区分所有法」となります。全14問のうち民法からは10問前後、借地借家法から3問前後、不動産登記法と区分所有法からは各1問の出題割合となっております。

(試験内容面)

何と言っても宅建試験の難化傾向の大きな一因は「民法」の難化であります。受験生のレベルが上がっているため、特に権利関係を難化させ合格率を調整する科目となっています。また民法の分野は膨大であり、それらを網羅的に学習する事は約半年の学習期間的に不可能であり、またその必要もありません。完璧主義は間違った勉強方法へと逸れていきますので要注意です。

近年の宅建試験でとりわけ権利関係の試験問題は、問題形式や内容が多様化しているとともに、毎年その出題傾向が変化しており、このような多様性と変化に対応する勉強が要求されています。例えば、過去問題と同内容の問題であっても、全く同じ形式や表現で出題されるのではなく、事例問題や判決文問題に変えたり、表現・言い回しを複雑にしたりすることにより難問化され、より応用力、問題対応力がないと正解しにくい問題が増えた点は2017年の特徴の1つです。このように近年の宅建試験問題の形式面・内容面において過去問題とは異なる出題が多いため、高得点を取るのが非常に難しい試験内容になっております。単に過去問題を解くだけでは合格することはもはや困難であり、様々な問題のパターンを幅広く解きこなし、問題対応力を徹底的に強化する事が重要です。独学での勉強法は、民法は1日の勉強時間がたとえ少なくても毎日継続が鉄則です。民法は一夜漬けや追込み学習は効かない科目です。日々の継続的努力で少しづつ思考力を養って解答力を訓練する科目です。

法令上の制限/税・価格/その他(免除科目)

(試験形式面)

例年、「法令上の制限」は問15から問22までの出題、「税・価格」は問23から問25までの出題、「その他(免除科目)」は問46から問50までの出題となっております。

法令上の制限は全8問中、例年「都市計画法」から2問、「建築基準法」から2問、「農地法」「宅地造成等規制法」「土地区画整理法」「国土利用計画法」「その他法令上の制限」から合計4問(基本的には各1問または選択肢またがりで出題)の出題となっています。

(試験内容面)

「法令上の制限」および「税・価格、そのた(免除科目)」は、合否を分ける科目であり、過去に出題された項目からの出題も見られます。しかし、過去問だけでは他の受験生に差をつけることはできません。この科目は、最も法改正及びその前提となるポイントの出題頻度が高く、また、最新動向を反映した問題も多く出題されます。そのため、これら法改正および最新動向への対応ができているか否かが合否に直接影響します。独学での勉強法は、日頃使用しているテキスト・参考書と併せてインターネット等で法改正情報、最新動向情報を入手しましょう。

宅建業法

(試験形式面)

例年、問26から問45までの20問分が宅建業法からの出題となっています。科目別に見ると問26から問44までの19問分が「宅建業法」、問45の1問が「履行確保法」からの出題となります。他の科目と違って、例年「宅建業法」から「個数問題」が集中的に出題されます(平成29年は6問が個数問題として出題)。

(試験内容面)

宅建試験において最重要科目であり、20点満点を目指して勉強する科目です。

宅建試験の試験問題=宅建業法の試験問題と言っても過言ではありません。

独学も含めて勉強法における大きく3つの留意点が挙げられます。

1.個数問題対策

2.応用問題への対策

3.法改正問題への対策

1.個数問題対策についてですが、各選択肢について正確な知識が求められます。傾向としては全選択肢が概ね基礎基本知識からの出題が中心ですので、個数問題対策というよりは、基礎基本知識を正確に習得する勉強方法が結果的に個数問題対策にも通じてきます。独学での勉強法も同様です。

2.応用問題への対策についてですが、近年の宅建試験の試験問題は国土交通省が作成した実務の指針である「宅建業法の解釈・運用の考え方」から多数の出題があります。平成29年の宅建試験では30肢に出題が及んでいます。従来のように単なる条文からの出題だけではなく、宅地建物取引士(宅建士)の実務を重視した出題が近年高まっております。独学での勉強法は、テキスト・参考書に「宅建業法の解釈・運用の考え方」の情報量が少ないと感じる場合にはインターネット等で情報収集をする事が不可欠であります。

3.法改正問題への対策についてですが、近年宅建業法は法改正ラッシュであり、平成30年も重要法改正への対応が鍵となります。この法改正部分は毎年出題可能性が高い項目ですから失点してしまうと他の受験生に差をつけられてしまい合否に影響しますので要注意です。独学での勉強法ですが、まずはそもそも最新の教材(テキスト・参考書、過去問題集、等)を使用することは必須です。その上で、何が本年の改正点なのかを明確にして置く必要があります。やはり、インターネット等を利用しながら情報収集を行って下さい。

以上が近年の宅建試験の内容です。

改正民法が施行される(2020年4月1日施行)前になんとしても合格をしましょう。

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【執筆協力】

藤本元純

FFP不動産コンサルティング(株) 代表取締役

【 現在の所属・加入団体・等 】
■不動産業(自営業)
 ・公益社団法人 全日本不動産協会
 ・公益社団法人 不動産保証協会
 ・公益財団法人 不動産流通推進センター
    (公認 不動産コンサルティングマスター)
 ・NPO法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
 ・一般社団法人 家族信託普及協会
 ・証券外務員
■大手資格試験予備校(宅地建物取引士試験合格講座講師)

 
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