毎週木曜日配信 さんきゅう倉田「そのニュースに課税します!」

不動産や住宅と深い関係がある税金。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属、元国税局職員のさんきゅう倉田さんが、税金に係わるニュースについて解説します。

今回は、世界的な大企業グーグルが行った租税回避に関する解説です。(リビンマガジンBiz編集部)


「グーグルはイギリスとの税務当局との間で220億円、延滞税を含む追加納税することで合意した」
「フランスの捜査当局は、グーグルのパリ支店を家宅捜索。課税を不正に回避した疑惑がある」
 
世界的な企業であるグーグルの親会社「アルファベット」も、超グローバル企業の多くが取り入れている「租税回避」を行なっていた可能性があります。

租税回避とは、脱税のような非合法のものではありませんが、通常用いられない手段で法の抜け穴を狙って、恣意的に納税を避ける行為です。当然ですが、法の趣旨に反した形で行われます。

超グローバル企業の中でブームになっているのが「ダブルアイリッシュ・アンド・ダッチサンドイッチ」という節税手法です。サイモン・アンド・ガーファンクルみたいですね。

法人税はそれぞれの国や地域によって異なります。日本の場合、実効税率は30%くらい。アメリカも35% と世界トップクラスです。このため、アメリカからの所得の流出が問題になっています。そのためトランプ大統領はアメリカの法人税を15%に下げると約束しました。世界各国が問題視しているのがわかります。

では、グーグルがしていたとされる租税回避とはどんな方法でしょうか。
先述のように、世界各国によって法人に課せられる税率は違います。そこで世界中でサービスを提供しているグローバルな企業は法人税率の低い国に本店を移します。例えば、イギリスは法人税が20%で、アイルランドは12.5%、タックスヘイブンのバミューダ諸島にいたっては0%です。

さらに国によってはグローバルな企業を誘致するため、パテント(特許権)など知的財産による所得への税率を低くするところが現れました。例えば、オランダは法人税率が25%のところを、技術研究開発活動からもたらされるすべての知的財産からの所得は5%としています。

こうした国ごとの税制の違いを、悪魔的に賢い頭脳を持つ集団が利用しようと考えたのが「ダブルアイリッシュ・アンド・ダッチサンドイッチ」なのです。

この方法でグーグルは、アメリカからアイルランドに海外ライセンスを移し、2つの法人を設立しました。12.5%という安い法人税に目をつけたのです。そこから、さらに知的財産による所得の税率が低いオランダの会社をはさんで、利益をバミューダ諸島に移します。

つまり、アメリカ→アイルランド→オランダ→アイルランド→バミューダとモノやカネが流れます。

・アイルランドとオランダは租税条約によって利益を移したときの税金が少なく済む
・アイルランドでは営業実態がない会社には法人税を課税しない

といった複雑な各国の税制優遇を巧みに利用して、租税回避を行っているようです。
(租税条約は、2つの国の間で結ばれた税金のルールのこと。)

フランスの機関の調査によると、グーグルのアメリカ以外での実質的な法人税は9%程度なのだと言われています。

租税回避は脱税と異なり、検察によって直ちに代表者が逮捕されるようなことにはなりません。あくまで指導や税制の改正などで対応しているのが状況で、各国の連携が急がれています。
しかし、こういった租税回避の下敷きがあってこその、快適で安価なサービスなのかもしれないと考えると、複雑な気持ちにもなります。

 
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