日経新聞を読まない君たちへ

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。

それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回は「年金2000万円問題」について解説します。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=写真AC

「老後に2000万円足りない!」と大騒ぎになっています。日経新聞を読まないみなさんでも流石にご存知でしょう。知らない?麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書を受け取らないと言って、もめているアレです。もめているんです。その報告書の正式な名前は「高齢社会における資産形成・管理」。金融庁の金融審議会が6月3日に公開しました(コチラです)。

老後の資金どころか今月の資金繰りに苦しい人にはピンと来ないかもしれませんが、長生きしたら、皆さんにも老後はあります。皆さんの前に、皆さんの親が老後を迎えます。親の生活費が2000万円足りないと言う。ただ事じゃありません。ちょっとおさらいしてみましょうか。

まず、「2000万円足りない」とはどう言うことか。

一言で言うと、足りないのは、年金以外の部分です。年金だけでは老後の生活資金の全てを賄うのは難しそうで、その足りない部分の金額が、死ぬまででだいたい2000万円と言う話です。

では、この2000万円はどうやってはじいた数字なのか。報告書では、無職の平均的な高齢夫婦(夫65歳、妻60歳)をモデルに試算しています。無職ですが、年金が入ります。でも、この年金だけでは、毎月の生活費には足りない。その額が月約5万円です。

実際にもらえる年金の額は、現役時代の給与所得というか、納めた年金額によって違うので人それぞれですが、平均があるとすれば、毎月5万円足りないと言うことです。夫婦で毎月5万円(正確には5万5000円)の赤字。老後が30年あるとして、5.5万円×12ヶ月×30年=1980万円足りない。年金だけじゃやっていけない。

では、足りない分をどうするか。預貯金から取り崩すことになります。報告書によると、65歳時点の夫婦が持つ平均的な金融資産の額は2252万円。長年にわたる貯金に、退職金などを加えると結構な額になるんですね。

だったら貯金で足りるじゃん、と言いたいところですが、試算の「生活費」には、老人ホームなどの介護費用や、住宅のリフォーム費用などは含まれていないそうなので、実際は年金プラス2000万円では十分じゃないかもしれない。でもまあ、切り詰めて生活すれば、年金の範囲内で生活することができる人もいるわけで、実は個人差が大きい数字でもあります。

「年金で老後を過ごせると思っていたら、2000万円も足りないのか!騙された!」と言う怒りが、今回の騒動の発端のようです。年金だけで生活できると思っている人がたくさんいることに驚きますが、なぜこんなことになったのか。

一つには、国が年金制度は「100年安心」と繰り返し謳ってきたと言う事情があります。これを、人生100年時代に100年間安心して暮らせる年金制度ですよ、と言っていると思った人が多かった。でも実際は、100年間、年金制度が破綻しないと言っているだけです。どうやったら破綻しないか? 年金の給付額(毎月支払う年金の額)を引き下げるとかして工夫すれば、まあ、破綻はしないですよね。そんな話です。

▶年金の仕組みは複雑!
 
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