M&Aが増えています

「日経新聞くらい読めよ」社会人なら誰もが一度は言われたセリフです。そりゃ、客先で経済ニュースを語れるとかっこいいですもんね。でも、「だって、みんな読んでないしな…」と、何となく済ませている人も多いのではないでしょうか。それでは、心許ないので最低限に知っておいて欲しい経済ニュースを、経済誌の現役記者・編集者がこれ以上ないくらいにわかりやすく解説します。今回はM&Aについて取り上げます。(リビンマガジンBiz編集部)

画像=PIXABAY

こんにちは。日経新聞を読まないみなさんは気がついていないかもしれませんが、実は今、企業のM&A(合併・買収)が増えています。

M&Aの助言会社などを行うレコフの調べによると、2019年1~12月の日本企業のM&Aの件数は4088件で、初めて年間4000件を超えました。

2019年のM&A全体の件数は4,088件と過去最多を更新したそうですが、特に事業承継のためのM&Aが増えているようですね。その他にもベンチャー投資や上場会社による子会社売却が活発化しており、件数全体が増加しています。皆さんは気がついていないようですが、2012年以来、8年連続でM&Aの件数は増加しているそうです。

ちなみに、買収金額が最も大きかったのは、アサヒグループホールディングス(HD)による、ベルキー企業のアンハイザー・ブッシュ・インベブが持つ豪州のビール事業の買収で、約1兆2096億円でした。2位は、Yahoo Japanなどを展開するZホールディングス(HD)によるLINEの経営統合で、1兆1806億円でした。1兆超とは結構な金額に見えますが、武田薬品工業がアイルランドのシャイアーを買収した時には7兆円でしたから、実は昨年のM&Aは、金額的にはそんなに大きくなかったんですね。(武田薬品の買収劇が高過ぎ!という意見もあるようですが)

念のため、そもそもM&Aとは何か、について簡単におさらいしておきましょう。「Mergers(合併)」のMと、「Acquisitions(買収)」の頭文字のAを組み合わせて、M&Aといいます。企業の株式を買って、対象企業を吸収合併したり、子会社化したりすることを指します。完全子会社化までいかずとも、株式を取得して経営上の発言力を強めたりすることもありますね。

そしてM&Aは、株を取得する時のやり方や、目的によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものを紹介すると、いちばんニュースなどで目にする機会が多いのが「TOB(株式公開買付け)」です。

TOBは、買付けの期間、買取り株数、そして価格を公開して、株式市場を介さずに株式を買い集めるというものです。「この株価で買いますよー」と宣言して、株を買い集めるイメージですね。買われる側と同意が取れている場合は「友好的TOB」、同意を得ずに仕掛ける場合は「敵対的TOB」と呼ばれます。ニュースになりやすいのは、敵対的な方です。2006年、王子製紙が北越製紙にTOBを仕掛けたのが、日本で初めてのTOBと言われています。

ニュースの記事になることは少ないかもしれませんが、ビジネスの場面でよく耳にするのが「MBO(マネジメント・バイアウト)」です。これは、経営陣が株主から株式を買うことで、オーナー経営者として独立することを指します。社内ベンチャーで始めた事業を独立させたりする時にもこのMBOが使われます。みなさんもいつか、MBOで独立する、なんてことがあるかもしれません。(日経新聞も読まずにMBOした事例があるのかは、わかりませんが)

M&Aの歴史を振り返ると、M&Aというのは、世界の潮流の中における日本の位置付けや、日本社会のさまざまな事情を反映する鏡でもあることがわかります。

日本のM&Aが世界で注目を集めるようになったのは、1980年代のバブルの頃。三菱地所による米ロックフェラーセンターを、ソニーが米コロンビアを買収して、世間を騒がせました。日本がぶいぶい言わせて、世界を買い占めようとしていた時代です。(そんな時代もあったんですよ!)

その後、バブル崩壊を経て日本のM&Aは長らく停滞気味の時期を迎えます。元気を取り戻してきたのは2011年ごろから。このころになると、人口減少が見えてきた国内に見切りをつけ、世界で戦えるグローバル企業になろうと、海外事業拡大のために海外企業を買収する動きが出てきました。代表的なのがビール業界。アサヒグループHDは豪州の企業買収に力を入れてきました。また銀行も、海外への足がかりのために企業買収をしています。2013年には三菱UFGフィナンシャル・グループがタイのアユタヤ銀行を買収して子会社化しました。

最近、中小企業が関与するM&Aで多いのは、事業承継です。後継者が不在のため、企業を他社に買ってもらうというケースが増えています。レコフのような仲介会社が手がけるのも、このケースが多いようです。

不動産業界でも、中小企業を中心に事業承継に関連したM&Aの事例が多数あります。リログループやLIXILリアルティが積極的に賃貸管理会社を買収しています。その他の企業もM&Aが経営課題に上がっているようですね。あなたの働く会社もM&Aの対象になるかもしれませんね。

 
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